ナポリタン発祥のホテルで「元祖の味」をいただきます!

「ミートソースとナポリタン、どっちがいい?」
と聞くと、たいがい「ミートソース!」と答える娘に対して、もっぱら「ナポリタン!」派の夫。それぞれ好みが違い、献立がパスタの日はどちらを作るか(娘と夫、どちらの希望を聞き入れるか)ちょっと困ってしまいます。どちらにも喜んでほしくて、不本意ながら両方作る…、なんてことも。
そこで「とびきりおいしいナポリタンを娘と食べて、娘をナポリタンのファンにしちゃおう!」と思いついた夫。うまくいけば、パスタの日は毎回ナポリタンになるかもしれないゾという魂胆です。2人ともナポリタンのファンになってくれたら、私も幸いこのうえなし。
おいしいナポリタンといえば、横浜の「ホテルニューグランド」。港町横浜を代表する観光地の山下公園に面した老舗のホテルで、このホテルのレストランがナポリタン発祥の地といわれています。


レストランはホテルの旧館一階部分(写真上)。中庭も美しい(写真下)。



以下、ホテルの紹介文を引用。
終戦とともにニューグランドを接収した進駐軍は、それまで日本人に馴染みのなかったケチャップを持ち込んで、ゆでて塩こしょうで味付けをしたスパゲッティを和えました。当時ケチャップとスパゲッティは軍用食でした。(料理長の)入江茂忠は苦心の末、ケチャップではいかにも味気ないので、刻んだにんにくに玉ねぎやトマト、トマトペーストを入れ、オリーブオイルをたっぷり使った風味豊かなトマトソースを作りました。ハム、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームを強火でよく炒め、スパゲッティを加え、トマトソースに合わせ、すりおろしたパルメザンチーズとパセリのみじん切りをたくさんふりかけました。イタリアのナポリで中世の頃、トマトから作られたソースをパスタにかけ、路上の屋台で売られていたのをヒントにスパゲッティナポリタンと呼ぶことにしました」

レストラン入口には資料展示コーナーも。



この内容を娘にひととおり説明すると、アンチナポリタン派の娘もがぜんナポリタンを食べてみたくなったようです。ちょうど小学校で「横浜発祥の物や事」というテーマで自主学習したばっかりだったのもタイミングがよかった。おまけに、創業1927年の重厚なホテルの雰囲気と相まって「ここのナポリタンは、そんじょそこいらのナポリタンとは違うかも!」と期待感もアップした模様です。
レストランに入ろうとすると、休日のためか結構混んでいてウェイティング6番目。すでに空腹だった娘は「えー、6番目? 何分待つの?」
すっかりナポリタンモードになっていたのと空腹もあり、ちょいと不機嫌に。
ナポリタン、ナポリタン……」とつぶやきながら、そわそわと廊下を歩き回っています。あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。もどってくると、
「ねぇ、まだ?」「まだ!」
何回かこんな会話をくり返しながら30分ほど待ち、いよいよ店内へ。迷わず「ナポリタン!」を注文し終えて、やっとひと息。
私「ホテルの廊下にナポリタンのうんちくが書いてあったんだけどさぁ…」
娘「え、うんちく?! 今、ママ『うんち』って言ったよね?」
私「言ったよ…」
娘「うんちくってどういうこと?」
私「あることについて詳しく書いた、豆知識的なことって感じかな。」
娘「えー、それがうんちくなの? 『うんち』くっていうから、『うんち食っちゃう』かと思っちゃったよ。ママー、もうやだな〜。ギャハハ」
私「しー。ちょっと静かに!」
小4女子、由緒あるホテルのレストランであることはすっかり忘れて「うんちく」に妙に反応します。やれやれ、疲れます。こんな素敵なホテルのレストランには、ひっそりと一人で来たいものです。娘がひとしきり大笑いしたところで、ナポリタンの登場です。
濃いオレンジ色のケチャップをたっぷりまとった、艶やかなスパゲッティがこんもり。ピンク色のハムと緑色のピーマン、灰色のマッシュルームがほどよいバランスでのっています。

ザ・元祖ナポリタン!


娘「あは〜ん、いい香り」と、うっとり顔。
ケチャップ★ラブな娘は、まずは香りに反応。
私「熱いうちにどうぞ!」
小さな娘の手にはやや大きめのフォークを握りしめ、スプーンのへこんだ部分で少々ぎこちなくくるくるとスパゲッティを丸めて口へ。唇にケチャップをつけないように、思いっきり口をあけて頬張ります。
娘「う〜ん、もちもちしていておいしいねぇ。」
空腹を満たすべくしばし無言でナポリタンを食べ続ける娘。半分ほど食べるとお腹も落ち着いたようです。
娘「ケチャップがたっぷりでいいよね! 家で食べるのはさ、何かケチャップ少なめじゃん。それがいちばん違うところかな。あと〜、ここのはスパゲッティが柔らかだよね。」
夫「そうそう、うちのナポリタンてケチャップ少ないよねー。色が赤じゃなくて、ピンクなの。今まで言うに言えなかった(笑)。やっぱりこれくらいたっぷり入れてほしいよね。」
娘「だよね〜。ケチャップたっぷりだけど、きつくなくやさしい味って感じ〜。」
なるほど。いつも薄味を心がけているため、どうしても私はケチャップをぶにゅぶにゅーっと絞り出すのをためらってしまうのです。
「あ〜、もうひと絞りしたらこってりしておいしいかも〜」と思いつつ、
「あ、でもそんなに入れたら濃すぎちゃう! だめよ、ダメダメ、そんなに入れちゃ!」という気持ちがせめぎあい、ついヘルシーさに負けていました。
私「わかった! 今度はこれくらい思いきってケチャップ入れて作るよ〜。」と夫と娘と約束。


うちのナポリタンも生まれ変わりました!


1週間後、「ホテルニューグランド」で食べた味を思い出して自宅でナポリタンを作ってみました。
夫「お、いいんじゃない! ケチャップたっぷり。今までは皿に盛られてから、自主的にケチャップ足してたけど、なんか違ったんだよね」
娘「んー、この前食べたのとおんなじくらいおいしいよ。スパゲッティも、もっちりしてるし。」とおほめの言葉をもらえました。ナポリタンの極意は、大胆に絞るケチャップと、少々のび気味のスパゲッティ。
娘の「もちもち」「柔らかい」からヒントを得て、ゆでてから30分ほど置いたスパゲッティを使ってみました。ザ★昭和の味ナポリタンにおいては、アルデンテなんてナンセンス。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんにも愛される懐かしの洋食の味ですね。
文・渡辺ゆき   写真・小林キユウ



【本日のメニュー】
ナポリタン1,700円

【データ】
ホテルニューグランド
住所:神奈川県横浜市中区山下町10
電話:045-681-1841
http://www.hotel-newgrand.co.jp/

「食べ録」番外編 ポーランドの古都クラクフにて


                                         クラクフ旧市街の中央広場(世界遺産地区)

3月下旬〜4月上旬にかけて、娘の春休みを利用して家族3人でポーランドへ行ってきました。
ポーランドへ行ってきた」というと、
「珍しい国へ行ってきたね」と何人かの知人にいわれましたが、
ポーランドは私にとって長年行きたいと思っていた国の一つ。ロシアやドイツという大国に挟まれて、何度も侵略されながらも復興を果たした不屈の国民性や、歴史ある美しい街並みにひかれていました。なかでも、首都ワルシャワの南へおよそ250kmにあるクラクフは、映画「シンドラーのリスト」の舞台として知られ、ポーランドへ行ったら絶対に行かなくちゃ!
と思っていた古都です。首都ワルシャワ第二次世界大戦末期にドイツ軍に徹底的に破壊されたのに対して、クラクフは14世紀の建物が今も残る、それはそれは美しい街。歩いて回れるくらいほどよい広さの街の中心部(世界遺産)には、おしゃれなカフェや老舗のレストランも多く、居心地がよいあまり、11日間の滞在中9日間をクラクフで過ごしてしまいました。シンドラーの元工場施設も訪ねました。
そんなクラクフで、3日間通い続けた地元の人にも大人気のポーランド料理店「モルスキェ・オコ」からの食べ録です。まずは1品め、ライ麦を入れて発酵させた水でじゃがいもや肉を煮込んだ酸味のあるスープ「ジューレック」。ポーランドではポピュラーな一品で、家庭でもよく作られるらしく、ぜひとも食べたかった一皿です。




店の外観も内観も山小屋風のつくり。どこかスイスのチロル的な雰囲気に通じている。



娘「わ! 何これ、パンだよ。パンにスープが入っているの?!」
夫「いきなり器がパン。やるねぇ」


スープというからには平らな器が登場するものと思っていた娘は、まずは見た目にびっくり。スープが入っているとはいえ、このパン本当に大きいんです。直径、高さともに優に15㎝はありそうです。これをもしも一人ひとつずつ頼んでいたら……。もうそれだけでお腹がいっぱいになってしまいそうです。ポーランド人の胃袋、いったいどれだけ大きいんでしょう。
娘「いただきまーす!」
そっとふたを取り、ひと口すする娘。
娘「すっぱい! スープがすっぱいよ! すっぱくてちょっとだけしょっぱくて、じゃがいもにも味がよーくしみてるよ。お肉がほろほろだね〜」
寒い国だからか、味は濃いめです。さらに食べ進むと、スープの中にゆで卵を発見!
娘「ねぇ大変! ゆで卵が入っているよ!! お店の人、間違えて入れちゃったのかな?」
さすがにそんなハズないでしょ(苦笑)。
私「このジューレックっていうスープにはね、具としてゆで卵を入れるものなんだって」ガイドブックで仕入れた情報をそのまま娘に伝授。
娘「へぇー、面白いね。でも、すっぱいのとゆで卵が合ってるよね。日本でもゆで卵にマヨネーズかけるとおいしいし」。
なるほどー。結構いっちょ前のことをいうので笑ってしまいます。酸味はあるものの、味噌汁と同じように発酵食品から作るスープだから親しみがわくんでしょうか、夫も気に入ったようです。おまけに、器になっているパンの部分にはスープがいい感じでしみておいしくて、3人でむしゃむしゃ平らげてしまいました。ちなみに、周りのポーランド人を見ると、パンは食べていなかったり、少しだけ食べているようです。もしかしてパンは食べないものかも?
ま、ツーリストということで気にしませんが…。


パンが器。不思議なことに時間をおいても中の水分は浸みだしてきませんでした


ここでちょっぴりポーランド料理についてご紹介。

みなさんは、ポーランド料理と聞いてどんな料理が思い浮かぶでしょうか?
出発前、私も娘もポーランド料理なんて、見たことも食べたこともありませんでした。世界中の料理が食べられる東京でも、ポーランドレストランって調べた限り存在していませんでした。

では、ポーランド料理っていったいどんなものなんでしょう?
ガイドブックによれば、ドイツやロシアなど周辺の国々の料理の影響を受けたものが多く、肉や野菜をじっくり煮込んだものや、日本の餃子に似たものなど、素朴〜な雰囲気なものが多いようです。
実際に食べ歩いてみると、なるほどその通り。辛さや脂っこさは気にならず、子どもにも食べやすいものが多く、食が細い娘もどこに行ってもよく食べました。

ということで、次はメインディッシュの「ビーフグラーシュ、ポテトパンケーキ添え」です。メニューには、ポテトパンケーキは山岳スタイル、チーズはヤギのチーズと書いてありましたが、どの辺が山岳スタイルかはナゾ。グラーシュとはシチューのような煮込み料理で、ビーフシチューが好物の娘はこれをたいそう気に入りました。すりおろしたじゃがいもをカリッと焼いた上からビーフグラーシュをかけます。
娘「カリカリのパンケーキに熱々とろりんのシチューがいいね!



パンケーキっていうとさ、甘いホットケーキかと思っちゃうけど、これなら甘くないし夜ご飯にもいいね!」
娘が早口でまくしたてます。とにかくよくしゃべる。興奮するといつも以上に早口になる娘。
娘「ね! 早く食べれば。早く食べないとせっかくのカリカリがシナシナになっちゃうよ」
夫「ポテトパンケーキ、甘いジャムとかつけてもおいしいかも」
わかりやすい味に娘と夫は大満足。

ところでこのお店のウリは、ポーランド南方の山岳地方「ザコパネ」の伝統的な建築様式を模した店の造りです。太い丸太やレンガを組み合わせた素朴な内装で、ウェイトレスのお姉さんはカラフルでかわいい民族衣装を着ています。そんなわけで、メニューには「山岳スタイル」と銘打ったものがいくつかありました。
最後に頼んだのは、そんな山岳スタイルのメニューのひとつの「焼きチーズ」です。スモークチーズをさっと焼いて、甘酸っぱいベリー系のジャムが添えられています。
ビールがおいしい!


とにかくビールがうまい!

これはチーズ好きの私としては結構ヒットでしたが、ちょいと塩味がきついのと、チーズ+ジャムというのがハードル高めだったのか、娘には不評でした。偉そうなことをいっても、まだまだお子さまですな(笑)。

旅を終えて、横浜の自宅でのある日の夕ご飯。旅先で食べた味を思い出しながらあれこれ試行錯誤をして作ったポーランド料理を家族3人でいただきます。旅先でおいしいものを食べるのはもちろん楽しいですが、舌で感じた記憶はいつまでも色あせないステキな旅土産。
「すっぱいスープのジューレックの酸味はどうやってだすのかな?」
「ポテトパンケーキ、カリカリもっちりに焼く配合はどれくらいかな?」
舌や目や鼻の記憶をたぐり寄せていると、クラクフのレストランで過ごした旅の時間が鮮やかなによみがえってきます。
「またいつか行きたいな…」
そんな風に、旅の余韻にうっとりしたくてまた旅に出るのかもしれません。


山岳スタイルの伝統音楽も生演奏


文・渡辺ゆき   写真・小林キユウ


【本日のメニュー】
ジューレック132zt (日本円で約400円)
ビーフグラーシュ252zt(日本円で約750円)
焼きチーズ120zt(日本円で約360円)

【データ】
モルスキェ・オコ

電話:12-431-2423
営業時間:12:00〜23:00
http://www.morskieoko.krakow.pl

ザ★駅そばデビュー

私(ワタナベ)「明日、立ち食いそば食べに行ってみない?」
娘「え、立ち食い? 立ってそばを食べるの?」
私「うん、そう。駅とかによくあるところ。どう?」
娘「えー、やだよ。絶対イヤだ!! 立って食べるなんて絶対イヤだ!! それに、私そば嫌いじゃん」
私「あ、そうか。じゃぁ、うどんはどう?」
娘「うどんねぇ…」


目新しいことやものにはたいがい飛びつく、好奇心旺盛な娘の意外な反応です。
イヤな理由を聞いてみると、
娘「だって、うどんもそばもどこで食べてもいっしょでしょ。だったら、家でゆっくり食べたいよ」「それに…。立って食べるお店って、オシャレじゃないし、スーツ着た男の人が急いで食べるお店でしょ! もっとステキなお店なら行ってもいいけどさ」
 なるほど。3年生女子、なかなか鋭い観察眼です。灰色のスーツを着た猫背気味のリーマンに混じって、せかせか食べるなんて絶対にイヤ! というわけです。わかるぅ〜。
男親にはわからないかもしれませんが、かつては女子だった母親にはその気持ちわかります。が、この反応を見たら何としても連れて行ってみたくなるのが、こちらのホンネ。うっしっし。そこで、妥協案として、座れる席もある立ち食いそば屋へ行き、娘はうどんを食べるということに。


 やってきたのは、JR桜木町駅高架下近くの「川村屋」です。本題とは逸れますが、ここでちょこっと「川村屋」の紹介です。ただの駅そばの店かと思っていたら、実は創業明治33年という老舗でした。といっても、麺が手打ちだとか、趣きのある店構えだとかそんなことは一切ありません。見たところ、ごく普通の駅のそば屋です(笑)。そうはいっても、娘の駅そばデビューだし、老舗というだけで親はちょっとうれしくなっちゃいます。あくまで親だけですが…。

改札直結の正しい駅そば屋さんです。




カウンターにはお店の由来を紹介した新聞記事のコピーが。

 店に入ると、日曜日とはいえ昼どきのため配膳カウンターでは常に5〜6人待ちという混雑です。立ち食い席と座って食べる席の両方ありますが、食べてる人も並んでいる人も、ほぼ「おっさん」です。近くに場外馬券売り場があるからでしょうか、私の偏見かもしれませんが、人生にお疲れ気味の雰囲気を漂わせた方が多いようです。黒やグレーのもっさりした上着に、太めのスラックスをはいたおっさんが麺をすする姿を見た娘の表情はかたく、むっつり。終始伏し目がちです。何だかこちらまで気分が沈んでしまいそうですが、ここはひとつ気持ちを高めて券売機の前へ。
私「何食べる?」
娘「……」
券売機の各ボタンには、メニューがわかりやすいように麺の写真が添えられているにも関わらず、駅そばビギナーの娘は、何を食べたいか頭が真っ白になっているようです。じっくり選ばせてあげたいところですが、私たちの後ろに並ぶおっさんは
「駅そばであれこれ悩むな!」とばかりに、チッと舌打ち。
私たち母子にいらだっているのがありありです。
私「何にするの?」(さっきより、言い方はきつめ。ゴメン!)
とたたみかけると、約30秒の沈黙後
娘「油揚げがのってるの…」
ということで、娘=きつねうどん¥350、私=とり肉そば¥370、夫=天ぷらそば¥370に決定。しめて¥1,090也。安い! ビバ、駅うどん! 
 さて、チケットは買えたもののイス席は満員です。
 立ち席は空いていましたが、イス席を狙います。
 立って食べるのがイヤという問題ではなく、高さ1mはあろうかというカウンターでの立ち食いは、身長120cmの娘には物理的に無理。
が、さすがは駅そば、回転がよく配膳カウンターに並ぶ2〜3分の間に3席並んで空き、運よく親子で着席。ラッキー!
 こげ茶色のお揚げがのた熱々のうどんを前に、ようやく娘の表情もゆるんできました。割り箸を割って、うどんを1本つるり。何だかこわごわといった感じです(苦笑)。
私「どう、おいしい?」
娘「……」(こくり)
また1本、つるり。
私「しょっぱくない? 味ちょうどいい?」
娘「……」(こくり)
娘「ママ、静かに! お話は後でね!!」


急いでいても麺は一本ずつ食べるのが小3女子。




ネギが嫌いで、親にどけさせた後の図。


他人と肩を並べてきゅうきゅうになって食事をするのが初めての3年生女子、どうやら会話するのも気恥ずかしいようです。1本1本、いつも以上にゆっくり食べる娘を待って退店。青空の下に出て、娘はようやくホッとしたようです。
私「また来たい?」
娘「……。急いで食べなくちゃいけないのがやっぱりイヤ。食べてる途中、隣の人が2人も変わっちゃって、あせっちゃったよ!!」
どう見てものんびり食べてたけれど、本人は急いでいたというのを聞いてビックリ。
娘「それに、男の人ばっかりでちょっとこわかったし…。みんなごはん食べるのに上着脱がないし、みんな黒のジャンバーだし」

 どうようにリーズナブルなうどんでも、丸亀製麺やフードコートなどに入っている讃岐系うどんは大好きな娘。こちらも決しておしゃれではありませんが、大きく違うのは雰囲気。ファミリー系に囲まれてリラックスして食べるのはいいけれど、リーマンやおっさんに混じって食べるのはどうしてもイヤ。9歳の乙女心を再確認した駅そばデーでした。
ちなみに夫(やっぱり黒のジャンバー)は3分ぐらいで食べ終わってしまい、空のドンブリを前にずっと座っているわけにもいかず、店外で私たちをだいぶ待っていたようです(笑)
私個人としては、久々の立ち食いそばのホッとする味に満足でした〜。ごちそうさま!
【本日の予算 親子3人で1,090円也】

【データ】
住所:横浜市中区桜木町1丁目1 桜木町駅構内
電話:045-201-8500
営業時間:6:30〜20:00、日祝7:30〜20:00
JR・横浜市営地下鉄桜木町駅からすぐ。

冬の京都 しっぽりOL風の小3女子

小3の娘と京都にいます。父と娘の恒例の二人旅。
母と娘だと、娘が成人してもよく一緒に旅をする話を聞きますが、父親とはそうも行きませんので、娘が小学生のうちに二人旅をたっぷり楽しんでおこという作戦です。
ということで、娘と京都は昨年に続いて二度目。妻は横浜で留守番です(笑)
 
昼前に京都駅に着いて直行したのは南禅寺。参拝もせず、向かったのはすぐ脇にある湯豆腐の老舗「奥丹」です。昨年、「子どもにはどうかな?」と思いながら行ってみると、意外にも「いいね、いいね、湯豆腐、最高かも」とはまってしまい、翌日の昼も湯豆腐を別の店に食べに行ったほどでした。

さて、「奥丹」再訪です。
南禅寺の境内の一部ような最高のシチュエーション。静寂な空気、これだけでかなりの特別感。境内わきの水路の水が意外もきれいで、娘が見とれています。
「ここがホンノウジ(本能寺)?」
「…南禅寺です」
小3女子、お笑い番組の見すぎです。 
水路をのぞきながら、「去年、父(←娘は私のことをこう呼びます)はここに落ちないでねって何度も言ったんだよ、もう保育園じゃなんだから落ちるわけないでしょ」と娘。そして、どうしてもこの水に触りたいと、深さ50センチほどの水路に手を伸ばします。それでも届かないので道路に腹ばいでになって手を伸ばします。お寺境内で腹ばいになれるところが、小学生の無敵なところでしょうか。背中にしょったリュックが逆立ち状態で、頭の上にずり落ちています。ここで水に触ることに何の意味が?と問うと、「特に意味はない」とのことです。

雰囲気ある外観です。



奥丹の門をくぐり、店内へ。庭の前でいったん待って案内を待ちます。「お二人さんですね、どうぞ」と案内され、縁側に沿って歩き、靴を銭湯ような靴箱の中に入れて室内に案内されました。茶室を思わせる天井の低い年季の入った純和風の空間。
「去年はあっちに座ったよね、こっちの席もいいかも」と娘。本当は窓からは庭がきれいに見えるはずですが、鍋からの湯気でガラス窓はみんな曇っていいます。でも逆にそれが冬の京都っぽい。

窓が曇っているところが京の冬の風情。

 
早速、注文。
ちなみに選択肢はありません。
「湯豆腐 一通りコース」(3,240円税込)のみ。子どもメニューがないので、小3女子と同伴の場合、大人二人分頼むか迷うところですが、二人前だとさすがに多いので、一人前のみの注文。「メニューが一つしかないお店っていうのは、自信があるってことだよね」と聞いたふうなことを言います。
「ねぇ、父」
「なに?」
「ここのお店って、いったい何人家族なんだろうね? すごい多いよ」
「え?」
「だってさ、みんな孫なんでしょ」
「孫?」
「さっき入口に書いてあったの読まなかったの? 孫が案内しますって書いたあったでしょ」
「それって、『係』だよ(笑)、係り」
 なんと店員全員が、さっき受付に座っていた初老の女将さんの孫だと思い込んでいた小3女子。
「あれ? あれ? 筆で書いてあったから、すごい読みにくい字だったんだよ」と娘。
 筆文字だったか僕もそこまで覚えていなかったので、納得しましたが、退店時に確認してみると、毛筆ではありませんでした。
「どう見ても『係』じゃん! 筆じゃないし」
「あれぇ〜?」
 咄嗟に言い訳が出てくるのが小3女子です。

これが問題の看板です。


 
 さて話を戻し、湯豆腐が運ばれてきました。


とりあえず、しっぽりOL風?

鍋に入った湯豆腐のほか、胡麻豆腐、串豆腐、てんぷら(海苔、大葉、カボチャ、獅子唐など5点)、ご飯、山芋とろろ、各薬味がずらりと並びます。子ども用の取り分け皿は、なんとクマのプーさんのプラスティック製。その味気なさに若干がっかりした様子ですが、箸袋(箸置きが折って作れる)がかわいくてにんまりです。


箸袋がウサギになります(笑)
 湯豆腐鍋の底のだし取り用の昆布を見て、「味が豆腐に染みてる気がする」
 「ねぇ、このワサビ取って」と胡麻豆腐の上のワサビをどけてほしいと要求してくる娘。まだまだ子ども、ワサビがダメ。そうかと思えばこんなことも言います。
娘「この山椒はいい、家のとちがうよ、生っぽい。だってうちのやつってスーパーで買うやつでしょ」
私「まぁね」
娘「やっぱり湯豆腐は京都だね」
私「分かるんだ?」(お皿はプーさんだけど)
娘「うんうん、この山椒が決め手です」
私「ワサビはだめで、山椒はOKなんだ?」
娘「だって山椒は辛い成分ないでしょ、普通、小学生大丈夫でしょ」


足がしびれて、「正座はもうやめた」と開き直る小3女子。

コースはご飯にとろろもついているので、意外にお腹いっぱいに。食後に熱いお茶をもらい、あぐらをしたままほっと一息。こんな時です、日本人に生まれてよかったなと思う瞬間は。同時に「あぁ、今、オレ京都にいるんだぁ」と実感します。


思えば四半世紀前、「奥丹」の前で一人、躊躇している紅顔の青年がいました(僕のことです)。大学4年生でした。本当は入ってみたかったのですが、一回の食事に三千円を出すことは無謀とも思える出来事で、結局店の門をくぐれませんでした。それに飲食店といえば松屋吉野家しか入ったこのない青年には果てしなく敷居が高い店構えに思えました。


あれから幾年月、私も大人になりました。豆腐を食べながら、なんとなく大人っぽく振舞えるのは、実は無邪気に振舞ってくれる娘のおかげなのだと、プーさんの皿をつかむ小さな手を見ながら思いました。娘と一緒に大人の修学旅行に来ている気もします。 


これから先、娘は大人になってからきっと誰かと、何度か京都に来ると思います。
ずっと先、恋人、そして夫となった人とも来るかもしれません。「もう何度目かの京都だけど、初めての京都は、父と歩いた京都だった」とその時思い出してもらうために、今僕は娘と一緒にここに来ているのかもしれません。

【本日のお会計】大人1人、子ども1人で3240円也(大人1人分コースのみ注文)。


【データ】
住所: 〒606-8435 京都府京都市左京区南禅寺福地町86−30
電話:075-771-8709
営業時間: 11時00分〜16時00分
http://www.webkyoto.com/okutan/
地下鉄蹴上駅から徒歩10分

港のブルース、牡蠣の味。

雨の夜、ここは横浜のとある埠頭。
ひと気のない大きな倉庫のような建物わきに車を停めました。
アクション映画でギャングが取り引きしそうな雰囲気で少し怖いです。
運転席に夫(小林)、後部座席に私(ワタナベ)と娘。



小3の娘「わー、煙出てる。何だか炭の香りがするよ!『かき小屋』だってさ。かき小屋ってなに?」
夫「カキを焼くとこだよ」
娘「だって、ここビルだよ」
夫「店名、イメージ、イメージ」
娘「早く行かないと売り切れちゃうかも。で、カキってなんだっけ?」
夫「貝です」
娘「あぁ…」

店の入り口。この建物奥が海に面しています。


 駐車場まで漂ってくるかきを焼く香ばしい炭火の香りに、店に入る前からテンションは上向きの娘。さてさて、今日は横浜の湾岸エリアで冬季限定で営業中の「かき小屋」へやってきました。
なんと店のテラスが海に面してます。船やヨットでの来場も歓迎とあります。確かに店に横付けできるのですが、そんな人本当にいるんでしょうか?
ビニールハウスというか、よく言えば小屋風。店内というか、半野外。炭火がないとかなり寒いです。たしかにどこか瀬戸内海の海岸のような風情。イスのビールケースはあえての演出でしょうか?
ちかちかと燃えるオレンジ色の炭を見ていると、大人も興奮してきます。
そこで娘が一言(まったく子どもは空気読みません)。
「ああ、でもウチ、貝嫌いだし…」
夫「え、そうだっけ?」


バイキング形式で、焼きたいものを自分で選んで、自分たちで焼くスタイル。カキは一皿(1kg)で1500円。ほかに貝付きのホタテ、サザエなどのほか、ハム類やホイル焼きセットなど、焼きたいものがずらり。一種のバーベキューですね。日本酒は片手鍋を渡されて、自分で炭火で温めるというオヤジスタイル。



 実は娘はカキを食べたことがありません(親もふだんあまり食べませんが)。独特のえぐみや渋みが嫌いで、実は貝類全般が苦手。そう、今日はかき初体験日なのです。
店支給の軍手をはめ、トングでカキの炭火の上に。すぐに缶をかぶせて蒸し焼き
にするのがここのやり方のようです。焼き上がるのに10分弱かかります。
殻付きのカキがかなりの迫力、ある意味グロテスク。この荒々しい物体の中に、プリプリした柔らかなあの身が入っているとは確かに子どもには想像しづらい。



娘「ああ、やっぱり無理かも、カキ」
夫「貝の中でも高級品なんだよ。嫌いって…。でも俺も子どものころよく分からなかったな。大人の味か」 
娘は食べたくない気持ち半分、炭火でジュージュー焼ける香ばしい香りに惹かれて食べたい気持ち半分。苦しい乙女心です。
恐る恐る箸でつまんで口へ運び、ごくり…。
「もっとぷりぷりしているのかと思ったら、案外ふにゃっとしているんだね。ぶちゅぶちゅにつぶしたタラみたい…」
表現だけは、いつも意外と関心します。
夫「なるほど、タラか。言えてる」
娘「思ったより、味はあんまりクセがないけど、ほらさ、貝っぽいからやっぱりイヤ…」
夫「だから貝だから…」
娘はひと口で終わりにしようとしましたが、意を決してもう一口。
「まぁ、さっきよりはおいしいかな」
夫「でしょ。落ち着いて食べようよ」
娘「でも、シシャモの卵をもっと小さくしたみたいにプチプチしている感じがどうしてもイヤ」
夫「……」
一口目よりじっくり味わった娘は、これ以上無理という風に箸を置きました。


小3女子、記念すべき、初牡蠣です。



娘「こっちのハム焼いていい?」
私「いいよ…」(ここがカキ焼くための店だとは、もはや忘れてるなコイツ)
娘「いいね、このジュージューな感じ!」
夫「まぁ、ハムもいいよね」
私(…結局、肉?)



 海なし県の信州育ちの夫は、ぽつり、独り言。
「でも俺、炭火で焼いたカキ食べたの初めかも。でも焼き方、相当難しいなぁ。なんか緊張する、さっきから時間まで計ってる」
というのも、客に焼かせる店側としては、食中毒防止のためしっかり熱を通してほしいらしく、店内のいたるところに「しっかり焼いてください。片面ずつ3〜4分」と張り紙が。
こちらもしっかり焼きたいのはやまやまですが、殻つきで中身が見えないこともあって、油断するとすぐにこげてしまい、なんだかよく分からないカキを食べるはめに。
かといってあまりにプリプリだと、逆に不安になって、店員に「これもう大丈夫ですか?」と聞いてしまうのです。


大人にとっては冬になったら「食べなくちゃ!」と思う食材の一つがカキ。
「今年もまた冬がきたなぁ」「肴に一杯やるか」とやや演歌的な心持ちかもしれません。子どもにはそんな意味でややハードルの高めだったかも。ま、「冬だね〜。いいね〜、カキの季節だね〜」という子どもはオヤジみたいで確かに怖いです。
〈本日のお会計 親子3人で6200円也〉

店のイメージキャラ。かなり濃い味付けで。


【DATA】
かき小屋 横浜タイクーン

(正式店舗名:ひろしま元祖 ミルキー鉄男のかき小屋 by TYCOON)

広島県内で何店舗も運営されている、かき小屋の直営店。本場広島から直送される新鮮なかきをはじめ、シーフードや肉料理を炭火で焼いて食べられるBBQスタイルが話題。かきを使った料理は、クラムチャウダーやアヒージョ、かき飯などほかにもいろいろあり、かき好きにはたまらない。ベイエリアならではの美しい夜景も楽しめる。

住所:横浜市中区新山下3-4-17
営業時間:11:00〜22:00(金・土・祝日前夜は、23:00まで) 冬期限定
お休み:不定休(雨天時や強風の場合、テラス席は使用不可となることも)
最寄駅:みなとみらい線元町・中華街駅
http://www.hiroshima-oyster.com//area/yokohama.php

ハヤシライス

「ハヤシライスってさ、林さんていう人が考えたんだってさ」
「へー、本当。だれが言ってたの?」
「給食のとき、みんな言ってたもん。カレーライスはさ、インドのカレーさんが考えたのかな?」
「そうかもね」

ムフフフ。

あぁ、こんなこと30数年前の自分も言ってたなぁ、
と思うと、懐かしいものです。
時代は変わっても、子どもの考えることってあんまり変わらないんですね。

さて、ハヤシライス。
うちではめったに作らないためか、
たまに学校で食べると、それはそれはおいしいそうです。
「ご飯に、かける」ことによって、
白米+おかずをそれぞれ単品で食べる以上の
おいしさを感じるんでしょうね、きっと。

(本日の献立)
・ハヤシライス
・マッシュポテト
・スイカ
・牛乳




まずは、じゃがいもの皮むきです。
スッスッ、皮が面白いほどむけるので
つい夢中に…。
にんじん、じゃがいもは一口大に切ります。



玉ねぎをじっくり炒めたら、
牛肉、にんじんを加えてさらに炒めます。
「うーんしょ、うーんしょ」
材料があれやこれやと多いので、
木べらをつかんで、力いっぱい混ぜます。


スープを加えたら、あくを取ってコトコト煮込みます。
あく取りをさせると、
いつも一生懸命すくってくれます。



ケチャップ、ソース、トマトピューレ…。
「ハヤシライスらしさ」の素を次々に投入。


「あは〜ん、あぁいいにおいだね〜」
お鍋に顔を近づけてご満悦です。


「さぁて、できたよー!」
ふだんはあんまり自分で器に盛らない娘も、
今日は喜び勇んでめいめいに盛ってくれました。

●材料(4人分)
牛こま切れ肉…250g
玉ねぎ(大)・じゃがいも…各1個
にんじん…1/2本
マッシュルーム(水煮缶)…60g
A(バター大さじ1と1/2 油大さじ1)
B(トマトピューレ・ケチャップ・ウスターソース・中濃ソース各大さじ2 赤ワイン・粉チーズ各大さじ1 デミグラスソース90g オールスパイス小さじ1/2)
薄力粉…大さじ3
スープ…250ml
油・塩・グリンピース…各適量
●作り方
1.玉ねぎは薄切りに、じゃがいもとにんじんはひと口大に切る。
2.ブラウンルウを作る。フライパンにAを入れて熱し、弱火で薄力粉を茶色になるまで7〜8分炒める。
3.鍋に油を弱火で熱し、玉ねぎをじっくり炒める。牛肉とにんじんを加えてさらに炒め、スープを加えたらあくを取りながら10分ほど煮る。
4.じゃがいもとマッシュルーム、2、Aを加えて10分ほど煮る。グリーンピースを入れて胚芽ご飯と器に盛る。