ザ★駅そばデビュー

私(ワタナベ)「明日、立ち食いそば食べに行ってみない?」
娘「え、立ち食い? 立ってそばを食べるの?」
私「うん、そう。駅とかによくあるところ。どう?」
娘「えー、やだよ。絶対イヤだ!! 立って食べるなんて絶対イヤだ!! それに、私そば嫌いじゃん」
私「あ、そうか。じゃぁ、うどんはどう?」
娘「うどんねぇ…」


目新しいことやものにはたいがい飛びつく、好奇心旺盛な娘の意外な反応です。
イヤな理由を聞いてみると、
娘「だって、うどんもそばもどこで食べてもいっしょでしょ。だったら、家でゆっくり食べたいよ」「それに…。立って食べるお店って、オシャレじゃないし、スーツ着た男の人が急いで食べるお店でしょ! もっとステキなお店なら行ってもいいけどさ」
 なるほど。3年生女子、なかなか鋭い観察眼です。灰色のスーツを着た猫背気味のリーマンに混じって、せかせか食べるなんて絶対にイヤ! というわけです。わかるぅ〜。
男親にはわからないかもしれませんが、かつては女子だった母親にはその気持ちわかります。が、この反応を見たら何としても連れて行ってみたくなるのが、こちらのホンネ。うっしっし。そこで、妥協案として、座れる席もある立ち食いそば屋へ行き、娘はうどんを食べるということに。


 やってきたのは、JR桜木町駅高架下近くの「川村屋」です。本題とは逸れますが、ここでちょこっと「川村屋」の紹介です。ただの駅そばの店かと思っていたら、実は創業明治33年という老舗でした。といっても、麺が手打ちだとか、趣きのある店構えだとかそんなことは一切ありません。見たところ、ごく普通の駅のそば屋です(笑)。そうはいっても、娘の駅そばデビューだし、老舗というだけで親はちょっとうれしくなっちゃいます。あくまで親だけですが…。

改札直結の正しい駅そば屋さんです。




カウンターにはお店の由来を紹介した新聞記事のコピーが。

 店に入ると、日曜日とはいえ昼どきのため配膳カウンターでは常に5〜6人待ちという混雑です。立ち食い席と座って食べる席の両方ありますが、食べてる人も並んでいる人も、ほぼ「おっさん」です。近くに場外馬券売り場があるからでしょうか、私の偏見かもしれませんが、人生にお疲れ気味の雰囲気を漂わせた方が多いようです。黒やグレーのもっさりした上着に、太めのスラックスをはいたおっさんが麺をすする姿を見た娘の表情はかたく、むっつり。終始伏し目がちです。何だかこちらまで気分が沈んでしまいそうですが、ここはひとつ気持ちを高めて券売機の前へ。
私「何食べる?」
娘「……」
券売機の各ボタンには、メニューがわかりやすいように麺の写真が添えられているにも関わらず、駅そばビギナーの娘は、何を食べたいか頭が真っ白になっているようです。じっくり選ばせてあげたいところですが、私たちの後ろに並ぶおっさんは
「駅そばであれこれ悩むな!」とばかりに、チッと舌打ち。
私たち母子にいらだっているのがありありです。
私「何にするの?」(さっきより、言い方はきつめ。ゴメン!)
とたたみかけると、約30秒の沈黙後
娘「油揚げがのってるの…」
ということで、娘=きつねうどん¥350、私=とり肉そば¥370、夫=天ぷらそば¥370に決定。しめて¥1,090也。安い! ビバ、駅うどん! 
 さて、チケットは買えたもののイス席は満員です。
 立ち席は空いていましたが、イス席を狙います。
 立って食べるのがイヤという問題ではなく、高さ1mはあろうかというカウンターでの立ち食いは、身長120cmの娘には物理的に無理。
が、さすがは駅そば、回転がよく配膳カウンターに並ぶ2〜3分の間に3席並んで空き、運よく親子で着席。ラッキー!
 こげ茶色のお揚げがのた熱々のうどんを前に、ようやく娘の表情もゆるんできました。割り箸を割って、うどんを1本つるり。何だかこわごわといった感じです(苦笑)。
私「どう、おいしい?」
娘「……」(こくり)
また1本、つるり。
私「しょっぱくない? 味ちょうどいい?」
娘「……」(こくり)
娘「ママ、静かに! お話は後でね!!」


急いでいても麺は一本ずつ食べるのが小3女子。




ネギが嫌いで、親にどけさせた後の図。


他人と肩を並べてきゅうきゅうになって食事をするのが初めての3年生女子、どうやら会話するのも気恥ずかしいようです。1本1本、いつも以上にゆっくり食べる娘を待って退店。青空の下に出て、娘はようやくホッとしたようです。
私「また来たい?」
娘「……。急いで食べなくちゃいけないのがやっぱりイヤ。食べてる途中、隣の人が2人も変わっちゃって、あせっちゃったよ!!」
どう見てものんびり食べてたけれど、本人は急いでいたというのを聞いてビックリ。
娘「それに、男の人ばっかりでちょっとこわかったし…。みんなごはん食べるのに上着脱がないし、みんな黒のジャンバーだし」

 どうようにリーズナブルなうどんでも、丸亀製麺やフードコートなどに入っている讃岐系うどんは大好きな娘。こちらも決しておしゃれではありませんが、大きく違うのは雰囲気。ファミリー系に囲まれてリラックスして食べるのはいいけれど、リーマンやおっさんに混じって食べるのはどうしてもイヤ。9歳の乙女心を再確認した駅そばデーでした。
ちなみに夫(やっぱり黒のジャンバー)は3分ぐらいで食べ終わってしまい、空のドンブリを前にずっと座っているわけにもいかず、店外で私たちをだいぶ待っていたようです(笑)
私個人としては、久々の立ち食いそばのホッとする味に満足でした〜。ごちそうさま!
【本日の予算 親子3人で1,090円也】

【データ】
住所:横浜市中区桜木町1丁目1 桜木町駅構内
電話:045-201-8500
営業時間:6:30〜20:00、日祝7:30〜20:00
JR・横浜市営地下鉄桜木町駅からすぐ。