秋の木曽路へ小旅行

お天気がよい秋の休日を利用して、ちょいと足をのばして長野県の南西部に位置する木曽路へ小旅行に1泊2日で行ってきました。車で中央道を飛ばすこと約5時間。紅葉狩りもかねて「えいや!」と出かけることに。
 木曽路といえば、江戸時代の五街道の一つ中山道で11の宿場があります。今回訪れたのは、妻籠宿と馬籠宿です。かつては大名や商人が行き来して大変栄えた土地ですが、鉄道の発達とともに明治時代ごろから廃れてしまいました。急速にさびれたことにより、江戸時代の街並みがまるで真空パックのように保存されたんだとか。



現在は、一軒一軒の家には持ち主である住人が住みつつ、当時の街並みがいい感じに保存されています。通りを歩くだけでまるで時代劇の主人公になったみたい。そんな木曽路へ出かけたのは、最近TVの「真田丸」にハマってすっかりレキジョ気取りの娘に江戸時代へとタイムスリップした気分を味わわせてみようと思ったから。真田丸が生きた戦国時代とはやや時代が違いますが、時代とともに変わる暮らしや社会に触れてもらおうという思いです。



 というわけで、今回は木曽路で「食べ録」…。休業中のところも意外にあり、妻籠宿の限られた選択肢の中から一軒のそば屋「松代屋」へ。広い玄関からうかがい見えた奥の座敷の様子が何ともひなびた風情で入ってみたくなりました。広い座敷にはちゃぶ台が7〜8卓。メニューは、そばとうどんのみ。それぞれに山菜ややまいもがのったのか、小さなおかずがついたセットメニューがあるのみです。そばが苦手な娘は温かいうどんを、私は温かいそばを、夫はざるそばセットを注文。メニューが少ないと迷うこともなく、あっという間に決まってしまいます(笑)。信州なのに、そばでなく、うどんという選択肢が子供らしい、といえば子供らしいです(笑)



窓の外をさえずる鳥の声を聴きながら熱いお茶をすすっていると、見知らぬ初老の男性が私たちの席に、まるでそうすることが当然のようにするっと座りました。
「あれ、相席かな?!」小林と娘が目を丸くして驚いています。
(‥‥誰?)
するとその男性は、
「お嬢ちゃん、どこから来たの?」とやおら娘に話しかけました。娘は驚きつつも、
「横浜…」とふし目がちに答えます。
「そう、いいところだね。木曽もいいところで、この家は179年前に建った家なんだよ。おじさんはこの家の7代目。そば屋と旅館をやっているんだよ。木曽は古いものがたくさん残っていていいところでしょ。今日の日を忘れないで、また大人になったらきっときっと遊びに来てね…」。
そんなことを一人語りのように話しては再びすっと席を立ち、今度は隣の席へ。あちらでも同様のことを語っているようです。
「あー、ここのご主人だったんだ」。
言葉にはしませんが、娘もようやくおじさんの立場を理解できたようです。
ちなみにここのおばさんもいい味出してました。


 安心したようにお茶をひとすすり。早起きして出かけてきたせいか、娘はいつになく寡黙でぼんやりしています。ラジオもBGMもなく、聞こえてくるのはほかの客たちの小さな話し声と鳥のさえずりのみ。すすけた濃い灰色の壁にかかる柱時計を眺めていたら、時計の針がぐるぐると逆回転し、そのまま江戸時代にひきずりこまれそうです。娘もそんな気持ちでいたのかもしれません。普段の饒舌さはなく、ひっそりとうどんをすすっています。大人もどこか江戸の旅人になった気分です。  



そんな雰囲気を今回はショートムービで。
http://taberoku.tumblr.com/



 木曽路で娘がハマったのが栗きんとん。つぶした栗と砂糖を混ぜて茶きんに絞ったお菓子で、こっくりとした自然な甘みがなんとも優しい味わいです。大人が大きな口をあければ、ひと口で食べられるくらいの大きさのきんとんを、娘はちびちびとかじって、それはそれは大事に食べました。よほどおいしかったのかお土産に買って帰りたいと言い、6個入りを購入。春でも夏でもなく、肌寒くなってきた晩秋の空の下、そぞろ歩きをしながら食べる素朴な栗のお菓子、というのが歴女気取りの小4女子のハートと舌にヒットしたようです。



 食後は女2人旅よろしく、妻籠宿、馬籠宿の両宿を散策。
「ママ、昔ここを歩いた人たちはどんなことを考えたんだろうね?」
「そうね、お腹が減ったとかお花がきれいとか、疲れたなとかそんなことじゃない?」
「ふううん、そうかもね」
石畳の上を歩きながらそんなことを話しました。ふだんはもうあんまり手をつなごうとはしないのに、この日は手なんて握っちゃって。旅はいいものですね★


本日のお会計
そばセット 980円
とろろそば 780円
温うどん  600円


【データ】
住所:長野県木曽郡南木曽町妻籠
電話:0264-57-3022
営業時間:要問合せ
JR南木曽駅からバス。