「食べ録」番外編 ポーランドの古都クラクフにて


                                         クラクフ旧市街の中央広場(世界遺産地区)

3月下旬〜4月上旬にかけて、娘の春休みを利用して家族3人でポーランドへ行ってきました。
ポーランドへ行ってきた」というと、
「珍しい国へ行ってきたね」と何人かの知人にいわれましたが、
ポーランドは私にとって長年行きたいと思っていた国の一つ。ロシアやドイツという大国に挟まれて、何度も侵略されながらも復興を果たした不屈の国民性や、歴史ある美しい街並みにひかれていました。なかでも、首都ワルシャワの南へおよそ250kmにあるクラクフは、映画「シンドラーのリスト」の舞台として知られ、ポーランドへ行ったら絶対に行かなくちゃ!
と思っていた古都です。首都ワルシャワ第二次世界大戦末期にドイツ軍に徹底的に破壊されたのに対して、クラクフは14世紀の建物が今も残る、それはそれは美しい街。歩いて回れるくらいほどよい広さの街の中心部(世界遺産)には、おしゃれなカフェや老舗のレストランも多く、居心地がよいあまり、11日間の滞在中9日間をクラクフで過ごしてしまいました。シンドラーの元工場施設も訪ねました。
そんなクラクフで、3日間通い続けた地元の人にも大人気のポーランド料理店「モルスキェ・オコ」からの食べ録です。まずは1品め、ライ麦を入れて発酵させた水でじゃがいもや肉を煮込んだ酸味のあるスープ「ジューレック」。ポーランドではポピュラーな一品で、家庭でもよく作られるらしく、ぜひとも食べたかった一皿です。




店の外観も内観も山小屋風のつくり。どこかスイスのチロル的な雰囲気に通じている。



娘「わ! 何これ、パンだよ。パンにスープが入っているの?!」
夫「いきなり器がパン。やるねぇ」


スープというからには平らな器が登場するものと思っていた娘は、まずは見た目にびっくり。スープが入っているとはいえ、このパン本当に大きいんです。直径、高さともに優に15㎝はありそうです。これをもしも一人ひとつずつ頼んでいたら……。もうそれだけでお腹がいっぱいになってしまいそうです。ポーランド人の胃袋、いったいどれだけ大きいんでしょう。
娘「いただきまーす!」
そっとふたを取り、ひと口すする娘。
娘「すっぱい! スープがすっぱいよ! すっぱくてちょっとだけしょっぱくて、じゃがいもにも味がよーくしみてるよ。お肉がほろほろだね〜」
寒い国だからか、味は濃いめです。さらに食べ進むと、スープの中にゆで卵を発見!
娘「ねぇ大変! ゆで卵が入っているよ!! お店の人、間違えて入れちゃったのかな?」
さすがにそんなハズないでしょ(苦笑)。
私「このジューレックっていうスープにはね、具としてゆで卵を入れるものなんだって」ガイドブックで仕入れた情報をそのまま娘に伝授。
娘「へぇー、面白いね。でも、すっぱいのとゆで卵が合ってるよね。日本でもゆで卵にマヨネーズかけるとおいしいし」。
なるほどー。結構いっちょ前のことをいうので笑ってしまいます。酸味はあるものの、味噌汁と同じように発酵食品から作るスープだから親しみがわくんでしょうか、夫も気に入ったようです。おまけに、器になっているパンの部分にはスープがいい感じでしみておいしくて、3人でむしゃむしゃ平らげてしまいました。ちなみに、周りのポーランド人を見ると、パンは食べていなかったり、少しだけ食べているようです。もしかしてパンは食べないものかも?
ま、ツーリストということで気にしませんが…。


パンが器。不思議なことに時間をおいても中の水分は浸みだしてきませんでした


ここでちょっぴりポーランド料理についてご紹介。

みなさんは、ポーランド料理と聞いてどんな料理が思い浮かぶでしょうか?
出発前、私も娘もポーランド料理なんて、見たことも食べたこともありませんでした。世界中の料理が食べられる東京でも、ポーランドレストランって調べた限り存在していませんでした。

では、ポーランド料理っていったいどんなものなんでしょう?
ガイドブックによれば、ドイツやロシアなど周辺の国々の料理の影響を受けたものが多く、肉や野菜をじっくり煮込んだものや、日本の餃子に似たものなど、素朴〜な雰囲気なものが多いようです。
実際に食べ歩いてみると、なるほどその通り。辛さや脂っこさは気にならず、子どもにも食べやすいものが多く、食が細い娘もどこに行ってもよく食べました。

ということで、次はメインディッシュの「ビーフグラーシュ、ポテトパンケーキ添え」です。メニューには、ポテトパンケーキは山岳スタイル、チーズはヤギのチーズと書いてありましたが、どの辺が山岳スタイルかはナゾ。グラーシュとはシチューのような煮込み料理で、ビーフシチューが好物の娘はこれをたいそう気に入りました。すりおろしたじゃがいもをカリッと焼いた上からビーフグラーシュをかけます。
娘「カリカリのパンケーキに熱々とろりんのシチューがいいね!



パンケーキっていうとさ、甘いホットケーキかと思っちゃうけど、これなら甘くないし夜ご飯にもいいね!」
娘が早口でまくしたてます。とにかくよくしゃべる。興奮するといつも以上に早口になる娘。
娘「ね! 早く食べれば。早く食べないとせっかくのカリカリがシナシナになっちゃうよ」
夫「ポテトパンケーキ、甘いジャムとかつけてもおいしいかも」
わかりやすい味に娘と夫は大満足。

ところでこのお店のウリは、ポーランド南方の山岳地方「ザコパネ」の伝統的な建築様式を模した店の造りです。太い丸太やレンガを組み合わせた素朴な内装で、ウェイトレスのお姉さんはカラフルでかわいい民族衣装を着ています。そんなわけで、メニューには「山岳スタイル」と銘打ったものがいくつかありました。
最後に頼んだのは、そんな山岳スタイルのメニューのひとつの「焼きチーズ」です。スモークチーズをさっと焼いて、甘酸っぱいベリー系のジャムが添えられています。
ビールがおいしい!


とにかくビールがうまい!

これはチーズ好きの私としては結構ヒットでしたが、ちょいと塩味がきついのと、チーズ+ジャムというのがハードル高めだったのか、娘には不評でした。偉そうなことをいっても、まだまだお子さまですな(笑)。

旅を終えて、横浜の自宅でのある日の夕ご飯。旅先で食べた味を思い出しながらあれこれ試行錯誤をして作ったポーランド料理を家族3人でいただきます。旅先でおいしいものを食べるのはもちろん楽しいですが、舌で感じた記憶はいつまでも色あせないステキな旅土産。
「すっぱいスープのジューレックの酸味はどうやってだすのかな?」
「ポテトパンケーキ、カリカリもっちりに焼く配合はどれくらいかな?」
舌や目や鼻の記憶をたぐり寄せていると、クラクフのレストランで過ごした旅の時間が鮮やかなによみがえってきます。
「またいつか行きたいな…」
そんな風に、旅の余韻にうっとりしたくてまた旅に出るのかもしれません。


山岳スタイルの伝統音楽も生演奏


文・渡辺ゆき   写真・小林キユウ


【本日のメニュー】
ジューレック132zt (日本円で約400円)
ビーフグラーシュ252zt(日本円で約750円)
焼きチーズ120zt(日本円で約360円)

【データ】
モルスキェ・オコ

電話:12-431-2423
営業時間:12:00〜23:00
http://www.morskieoko.krakow.pl