やさしい味の中華にほっと一息

 外食先で中華っていうと、「やっぱり化学調味料、多め?」ってイメージありますよね。レストランや食堂だと、ひと口目で「わ!おいしい!」と思わせるインパクトが必要だと思うし、食べた人の記憶に料理の味を強烈に残さなくてはならないから、どうしても味つけは濃いめに。おのずと化学調味料も使うことが多くなる、ということだと思うんです。

そんな中華のイメージをくつがえすようなお店を、横浜の本牧で見つけました。お店の名前は、「香(シャン)」。化学調味料は一切使わず、体に優しい中華料理をうたっています。中医学の理論に基づいた、薬膳料理の考えをとり入れているんだとか。

 ところで本牧といえば、戦後は米軍のキャンプのおひざ元として、人も飲食店も多く結構にぎわっていたようです。ところが、本牧周辺の日本への返還やバブル崩壊を経て、今ではすっかりさびれてしまったといわれています。そうはいっても、いえいえどうして商店街は結構頑張っているんです。おいしいパン屋さんや和菓子店も点在していて、商店街としての活気は今なお健在です。香は、その商店街のメインストリートに立っています。

 日曜日のちょうど昼時に訪れると、あまり広くない店内はほぼ満席。2人用の小さなテーブルにイスを1つ入れてもらい、家族3人できゅうきゅうに座りました。テーブルいっぱいにメニューを広げてあれこれ思案し、娘と私は「揚げ豚肉のせあんかけご飯」を、夫は「豚肉と野菜と卵のしょうゆ炒め」を注文。

 ほっと一息ついて周りを見回すと、客層は、ご近所さんが休日の遅めのランチを食べに来ている感じです。家族連れや中年のカップルなどなど。中華屋さんでよく見かける一人メンズは、なぜか皆無。みんなリラックスして、のんびりした雰囲気です。香は、街の気取らない中華屋さんではありますが、油ギッシュな、ガッツリ食べる系の「いわゆる中華屋」といった感じではなく、店の雰囲気や働いている人の物腰もちょっぴり上品で女性的。
そうかといってすました感じではまったくありません。「体に優しい中華」を掲げるオーラが店全体を包んでいるからでしょうか。何だか、座っているだけでホッとします。
 
 料理が出てくるのを待っていると、「ミックスジュースをどうぞ!」と、小さなグラスに入った薄いピンク色のジュースが出てきました。メインの前に出されるミニサラダよろしく、まずはヘルシーなジュースでお腹を落ち着かせましょうということのようです。べジファーストならぬ、ジュースファーストといったところでしょうか。お店の人に聞けば、ジュースの内容は日ごとに変わり、この日はヨーグルトをベースに、ブルーベリー、キャベツ、マンゴー、にんじん、リンゴ、バナナ、キウイ入りなんだとか。野菜とフルーツのフレッシュジュースがよほどおいしかったのか、娘は瞬く間に飲んでしまいました。もっと飲みたそうに夫のグラスを見つめています。中華屋でミックスジュースという意外性もあり、おいしさ倍増なんでしょう。

ミックスジュース




揚げ豚肉のせあんかけご飯




 さて、やってきました「揚げ豚肉のせあんかけご飯」。白いご飯にさくさくのロースカツがドーンとのって、野菜のあんかけがたっぷりかけてあります。
「わ、カレーの味がするカツだよ! カツなのにカレーの味がする。ねー、カレー、カレー!」
揚げたてのカツをフーフーいいながら頬張った娘は、カレー味に反応。
「カレー味のカツって食べたことなかったっけ?」私。
「うん」娘。
大好きなカレー味に気を取られて、ロース肉の苦手な脂身も気づかずに食べています。
「さくさくのカツに、中華丼のあんみたいなのがかかってるんだね。おいしい〜」
そういえば、娘は中華丼も好物でした。
「熱い熱い…」といいながら、お冷を飲んでは大きな口をあけてよく食べます。


豚肉・野菜・卵のしょうゆ炒め



 夫が頼んだ「豚肉、野菜、卵のしょうゆ炒め」も、ネーミングは地味ですが、なかなかイケてます。娘は見た瞬間「何か、おしゃれだね」と一言。
「野菜の色がきれいで、見てるだけでもうれしくなる」んだとか。
赤大根やごぼうなど、中華屋の炒め物ではあまり見かけない野菜が入っています。色がきれいなだけでなく、ファイバーリッチ。ヘルシー志向の女性に、とってもウケそうです!
で、このしょうゆ炒め、油はやや控えめで、食べても食べても食べ飽きない優しいお味です。やっぱり化学調味料が入っていないから? 帰りに、厨房にぶらーんとぶら下がる腸詰を売ってもらえないか聞いたら、まだ1週間くらい経たないと完成しないから

売れないそう。残念無念。今度は腸詰を買えるタイミングを狙ってまたご飯を食
べに行きたいものです。お店の名前同様、どれも香り立つようなおいしさでした。
ごちそうさま!


本日のメニュー
「揚げ豚肉のせあんんかけご飯」1,200円
「豚肉、野菜、卵のしょうゆ炒め」900円




文・渡辺ゆき  写真・小林キユウ

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中国料理 香 shan(シャン)

神奈川県横浜市中区本牧町1-46
TEL045-622-6578
営業時間
11:30〜14:30、17:30〜21:30
定休日 月曜日
第2・第4週の火曜日、第1・第3週の火曜のランチはお休みです。

http://shan-honmoku.wixsite.com/shan-honmoku