ハマの歓楽街伊勢佐木町で、熱々の刀削麺をすする

ハマの歓楽街伊勢佐木町で、熱々の刀削麺をすする

 

シュッ、シュッ、シュッ。
まるで忍者が手裏剣を投げるような怪しい手さばき。
「おおおお!!」
これはさずがにまねできない、と興奮気味の私と夫。
「早すぎて、1/250秒でもブレてしまう」とカメラを構える夫は慌てた様子。
そのころ、小4の娘はやや離れた場所で、「あ〜恥ずかしい。うちの親はなんでこんなことで
興奮するわけ?」(←親の想像)と憮然とした表情。


ラーメンでもうどんでもない、どちらかといえばすいとんを薄く長くしたような麺「刀削麺」ってごぞんじでしょうか?
太い大根のような生地の塊から、生地を麺状に削って直接沸騰した湯に落としてゆでて作ります。
中国華北地方の山西省に伝わる伝統料理で、
読んだ字のごとく、「刀で削った麺」だから刀削麺なんだとか。
何となく知ってはいるけれど食べたことはない、という人も多いかもしれません。
私もめったに食べませんが、自宅から車で10分ほどの横浜の歓楽街伊勢佐木町に名店があると聞き、
食べに行くことに。


店の名前は、「華隆餐館」。中華街にも近いこのエリアには、中国人が多く住んでいます。
中華街の料理店が観光客向けなら、華隆餐館をはじめこの界隈のお店は、
そこで働くジモティ中国人の胃ぶくろを満たすためのお店。お味は本格派にちがいあ
りません!!


 麺好きの両親が朝からテンション高めなのに対して、娘はいまひとつうかない顔をし
ています。実は、娘は刀削麺を食べに来るのをちょっと渋っていました。自分が見たこ
とも聞いたこともない麺を、何だかよくわからないお店で食べるのに抵抗を感じていた
ようです。さらに、
「何で暑い時期に熱いものを食べなきゃならないの?!」と、かなり不満顔。
さらには、「今日は刀削麺とかいうの食べるけどさ、次は絶対ピザとか私の好きなものにしてよね
。ね、絶対だよ!!」と念を押して渋々ついてきたのです。


最近の子どもはまったく生意気で、外食先にもあれこれ意見を言ってきます。
私が子どもの頃なんて、外食するだけでちょっとしたイベントだったし、うきうきしたものです。
やれやれ、これも時代の流れでしょうか…。隔世の寂しさを感じます。


そうは言っても、写真入りのメニューをのぞき込むと、さすがに娘の胃袋も反応した
ようです。牛すじ麺やマーボー麺など、刀削麺だけで約10種類。
「結構おいしそうじゃん!」と、すっかり機嫌を直した娘。あれこれ迷った末、
「スープが白くって、チャーシューが大きくておいしそう!」と言って、チャーシュー
麺をチョイス。
 辛党の私は坦々麺を、辛いものが苦手な夫は牛肉麺を注文。オーダーが入るやいなや
、店主と覚しき中国人の男性料理人が、さっと生地を抱えて煮え立つ大鍋の前へ。



削る前に生地を全体重でよく練り込む店主


私「さぁ、ゆでるのを見なくっちゃ! 麺をシュパシュパ削ってお湯の中に入れてゆで
るんだよ。ね、見ようよ!」
と、アゲアゲムードで娘を誘います。ところが娘は、「ママがひとりで見てくれば!」と、
かたくなにテーブルを離れません。麺をゆでるのを見るだけではしゃぐアラフォーの母
親に冷ややかな視線を撃ち込みます。第二次反抗期?! ま、放っておきましょう。


 料理人が左手に抱えた生地に、カーブした薄い包丁を当てて、スッスッと無駄のない
動きで麺を削っていきます。見ているだけでため息が出そうな職人技。
「すごいですねー」と、一人感服する私でありました。
 そうこうするうちに、刀削麺がやってきました。白濁したスープの中には、もっちり
した麺がたっぷり。まずは、胸いっぱいにスープの香りを吸ってから麺をひとすすり。
娘「つるっとしているのに、かむとむっちり。ちょっとフォーに似ているかな?! 熱い
けどおいしいよ!」
つるっとした麺をつるつる、つるつるとよく食べます。
娘「何かさ、スープがすっごい濃厚。普通のラーメンより太いからスープもこってりし
てるのかな? ね、そうだよね?」
私「うん、そうかもね」
しばし、無言で麺をすする娘。半分くらい食べると、
「この麺、食べても食べてもなくならない気がしてきた…」と言ってギブアップ。



娘が注文したチャーシュー麺。豚骨系(?)のこってり濃厚なスープと麺がマッチしてます!




特徴的な麺。エッジに削った名残があります。




これは私が注文した坦々麺のアップ。山椒と唐辛子がきいたピリッとした味わいがクセになる〜



わはは、そんなハズはないけれど、食べるのが遅い娘がもたもたしているうちに、麺が
スープを吸ってどんどんふくらんでいるためそんな風に感じたのでしょう。
そんなわけで、完食することはできませんでしたが、来たときとは打って変わって満ち足りた表情
の娘でありました。


娘と同様に刀削麺初体験の夫は、
「麺は、コシが弱めのほうとうみたいだね。滑らかでスープとのからみもいいし、
牛肉もホロホロで旨いじゃん!」と、牛肉麺をペロリと完食。
いずれにしても、もともとパスタやうどん、ラーメンなど麺が大好きな夫と娘は、
すっかり刀削麺のファンになった様子です。
何でもインスタント食品がある世の中ですが、さすがに刀削麺のインスタントはない
ハズ。もちろん自家製するのも無理。渋々着いてきた娘も、最後は
「また来ようね!」とにっこり顔。


生地の作り方やスープについてなど聞いてみたいことはたくさんありまし
たが、厨房に入り込む勢いで聞いてみましたが、「日本語わからないよ〜」と言われてしまい、聞くことはかなわず。
残念無念でしたが、とにかくおいしかった〜。


ちなみにこの店の通りを挟んだ正面にあの「ラーメン二郎」が偶然ですが、ありました。
相変わらずの行列です。しかも全員男。
あの人たちが、こちらのお店に来ることはないし、こちらの客が次郎に並ぶこともまずないと思います。
大きなくくりでは同じラーメンだとは思いますが、人っていろんな趣味趣向はあるんだなと、ふと思いました。

華隆餐館の店内より。2階の「マッサージ」という文字がどこか怪しい雰囲気。



こちらは華隆餐館の外観。ラーメン二郎前より。


【本日のメニュー】
チャーシュー麺750円
牛肉麺800円
担々麺(汁なし)800円


【データ】
華隆餐館(かりゅうさんかん)
住所:神奈川県横浜市中区伊勢佐木町長者町5-71-1
電話:045-261-6079
http://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140104/14005003/